TOYOTA JAPAN CUP 2016インタビュー第2弾(浅野則夫)
2016.02.11
今年の1月15日(金)~17日(日)にかけて沖縄県八重山郡竹富町小浜島リゾナーレ小浜島にて開催された、JWA JAPAN TOUR 2015-16 SLALOM 第4戦の『TOYOTA JAPAN CUP 2016』のインタビュー第2弾として、今回は、本大会のプロメンズクラス優勝者であり、スラローム界では10年以上にもわたって不動の王者として君臨している浅野則夫選手にインタビューしてみました。
まず、12~14ノットのライトウインドの中で行われた第1レースにおいて、予選ラウンドでは危なげなくトップフィニッシュで通過して、セミファイナルへ進んだものの、そのセミファイナルでは国枝選手にトップを奪われときのことについて聞いてみました。
この日のレースではスタートがかなり重要で、そこで失敗をすると抜ける場所があまりなく、また、前に選手に行かれると、かなり厄介なことになるので、スタートは全神経を集中させてレースに臨んだのですが、セミファイナルでは、フルスピードでスタートラインを切ろうとして走っていたものの出遅れてしまい、実はスタートを失敗していたようです。
スタートを切ると、風下側から中井選手がかなり良いスタートをしていて前に行かれてしまい、これはマズイと思って抜きにかかったところ、今度は風上側からも良いスタートを切った国枝選手にも来られてしまい、風下側と風上側との選手に挟まれて、スピードを思うように出せない状況となっていたようです。
その後、何とか中井選手を抜いて、前を走る国枝選手も抜こうと思って、第1マークでインを突いたら、逆向きに流れる潮の流れがかなり強く、ジャイブで失速しながらブイマークにもぶつかり、そこでもスピードを失速。第2マークまで何とか国枝選手に食らいつくものの国枝選手も良い走りをしていたのでなかなか抜けず、第3マークでもインを突いて抜こうとしたが、そこでもジャイブで失速、さらにはここでもマークにぶつかり、スピードに乗らないまま最後まで国枝選手との差を縮めることができず、そのまま2位でフィニッシュとなってしまったようです。次のファイナルでは、そのときの反省を踏まえての走りをしなければと、すぐに修正に入ったようです。
(第1レースセミファイナル)
第1レースのファイナルでは、セミファイナルでの反省を踏まえ、まずはスタートに集中することと、マークでのジャイブでも、あまりインを突くことをしないで、逆に大回りをするようにしてスピードを落とさないようにと注意深く走り、いつものスピードに乗った走りをこころがけたようです。
その結果、見事にトップフィニッシュしてゴール。まずは第1レースを制したのでした。ただし、このファイナルレースでも、中井選手がかなり良いスタートをしていて、浅野選手を後ろから常にプレッシャーをかけていたようで、最後まで気が抜けないレースとなっていたようです。
(第1レースファイナル)
そして、第2レースでも、少し風が上がってきたこともあり、スピードをさらに上げて予選ラウンド、セミファイナル、そしてファイナルと順調に進んで、見事にこのレースでもトップフィニッシュで終えています。
(第2レースセミファイナル)
(第2レースファイナル)
最終日では、風が南寄りに変わりつつ、20~25ノット、もしくはそれ以上の強風レースとなったのですが、そこでも浅野選手にはドラマが待っていました。
予選ラウンドでは危なげなくトップフィニッシュをして、セミファイナルへ進んだのですが、そのセミファイナルでは、スタートを失敗していたようです。
この日のレースでは、かなり風が強いことと南寄りの風に変わっていたので、ビーチでスタンバイして、そこからスタートラインへ向かって走り出し、うまくスタートに合わせてスピードに乗らせてトップスピードでスタートを切らなければならない、非常にシビアで難しいスタートとなっていました。
浅野選手もそれはわかっていたものの、セミファイナルでは、風下側からのスタートとなってしまい、少しでも早めに走り出さないと、風上側の選手のブランケットになってしまってなかなかスピードに乗らせることができないという状況になっていたようで、案の定、風上側から走り出す選手のブランケットになってしまって、結局ほぼビリからの走りだしとなってしまい、第1マークを回るときにはなんとまさかの5位でのマーク回航となってしまっていました。
ただし、ここでも浅野選手はあきらめることはなく、第2マークから第3マークへ行く頃にはスタートの失敗を取り戻すかのようにスピードをグングンと上げて前の4人を抜いてトップとなり、そのままフィニッシュしてファイナルへ進んでいます。
第3レースのファイナルでは、セミファイナルでのスタートの失敗から反省した点をすぐに修正して、絶好のスタートを切り、そのままトップを走り続けて、見事にトップフィニッシュしています。
今回のレースを通じて、まず小浜島のコンディションは風とともに潮の流れを正確に読まなければならないことがあり、それも、上げ潮と下げ潮のときとでは流れが全く逆になってしまうので、それを頭に入れながら走らないと、スタートでもジャイブでも、特にライトウインドのときにはわずかな失敗が命取りとなってしまうので、それがとても重要だと話していました。
ただし、このスラローム競技において、そうしたスタートやジャイブなど、細かいレース展開の中でのテクニック的なことも重要なのですが、むしろもっと重要なのは「スピード」であり、どうやったらもっと速く走らせられるか、という基本的なことでありながらも、これが最も重要だとも言っていました。
トレーニングをする際にも、もちろん誰かと一緒に走ることも重要ですが、そうしたトレーニングをする中で、毎回自分で課題をつくって、それに対するトレーニングをすることと、もっと速く走るためにはどうしたら良いか、ということのトライ&エラーみたいなことを考えながら繰り返していくことがとても重要だと話していました。
ここ10年以上チャンピオンである浅野選手に、なぜそんなに速いのか?ということについて聞いてみたのですが、速さの秘訣は、以前はなんでかということがあまりわからなかった時期もあったのですが、最近、特にここ数年においては、ボードをリフトさせて走らせることに重点を置きながら、どうしたらリフトさせて速く走らせることができるのか、また、毎回毎回課題に対するトレーニングを重ねていると、毎回新しい発見があり、その発見からまた新たな課題が出てきて、それに対する走らせ方をトライしつつ、また新たな発見が見つかるので、走っていて楽しくでしょうがないようです。
また、さらに速くなっているのが実感としてわかるので、速さに関しては、今が今までで一番アドバンテージがあるし、まだまだ可能性が見えてきていて、スピードがさらに伸びていくのではないか、ということを感じているようです。それだけにレースでは負ける気はまだ絶対にしないし、その速さをもっと日本だけではなく、海外でも試してみたい、と熱く語っていました。
ウインドサーフィンにはいろいろな種目があり、波乗りやジャンプを競うウェイブや、トリッキーな動きを見せるフリースタイルなどは、今や若い選手たちがどんどんと出てきていて、その選手たちも育ってきているのが目に見えてきています。こうしたウェイブやフリースタイルは、練習すればするほどうまくなっていく競技であり、ある意味若いときのエネルギーや体力的なことも必要な競技ですが、スラロームは、練習することも重要ですが、体力はもちろんですが、合せてむしろ道具に対する考え方や、速く走るための課題をどうやって見つけていくことができるかがとても重要で、そのためにはいろいろな経験も必要だし、道具に対する知識や考え方も必要なので、なかなか経験の浅い若い選手は出てきづらいというのもあるかもしれません。でも、常に考えながら走る、ということが必要なので、それができれば逆に歳をとっていても、いつまでも速く走り続けることができる競技だとも言っていました。
ただし、海外では、日本に比べると若くて速い選手が多く出てきているのは事実で、どうしてなのだろうと思うのですが、やはり周りの環境や若手の教育システムの充実などが理由になってきてしまうのでしょうか。
日本でも浅野選手をはじめとした速い選手は多くいるわけで、そうした選手たちの背中を見ながら、若い選手たちがもっともっと多く出てきてほしいと願うばかりです。
ちなみに、浅野選手は、常に新しい発見や課題が見つかるので、今が一番スラロームに関しては面白いし、楽しいので、まだまだこれからも走り続け、スピードにこだわりながら、これからもトップであり続けたいと言っていました。
これがもしかすると、速くなる秘訣なのかもしれません。
浅野選手は、トップ選手の中でも一人抜きに出ている選手であり、日本はもちろん、海外でも活躍できるだけの実力は持っていると思いますので、まだまだこれからの活躍に期待したいと思います。
今年は、強風でのワールドカップ開催地での参加や、南アフリカのスピードの試合にも出たいと言っていました。
これからのご活躍を応援しつつ、彼の背中を見ながら、まだまだスラロームの可能性を探り、一人でも多くの選手がスラロームをはじめとしたウインドサーフィンの楽しさを知ってもらえればと思っています。
文:OCEANS MAGAZINE
写真:HARRY
※TOYOTA JAPAN CUP 2016の全レースレポート、および全動画については以下をご覧ください。
http://oceansmagazine.net/feature/4946
※インタビュー第1弾(須長由季)
http://oceansmagazine.net/feature/5204