FREESTYLE FESTA ZUSHI 2016を振り返って
2016.04.22
先日の4月16日(土)~17日(日)にかけて神奈川県逗子海岸にて開催されたJWA JAPAN TOUR 2016-17 FREESTYLE 第1戦「FREESTYLE FESTA ZUSHI 2016」は、両日ともに大会を開催することができ、初日は風が弱かったのでノンプレーニングクラスを、そして2日目は朝から南~南西寄りの風が吹き荒れ、超爆風の中、スペシャルクラスやオープンクラス、そしてプロクラスをこなし、大会としては全クラスを成立させることができています。
ウインドサーフィンの大会としては、やはり風が吹かないとなかなか成立できないのが現状ですが、このフリースタイルの大会においては、風がたとえ吹かなくても、超微風の中でもノンプレーニングクラスを行えるので、大会成立の確率は高く、その分スポンサーもつきやすいとともに、ギャラリーも多く訪れる傾向があります。
今回のFREESTYLE FESTA ZUSHI 2016においても、初日は風が吹かなくてもノンプレーニングクラスの試合を行うことができたとともに、風も弱く、お天気も良かったので、その分ギャラリーも多く訪れ、ウインドサーフィンの大会を間近で見ることができた方も多かったのではと思います。
また、海に限らず、ビーチでもトークショーやビーチヨガなどの様々なイベントや、飲食店などの出店もあり、誰でも気軽に来れて楽しめる海のイベントとなりました。
また2日目は爆風の中で、本来の風が吹いている中でのウインドサーフィンの試合を行うことができ、大会としては近年の中では、大成功を収めている大会のひとつではと思います。
今回は、こうした大会を振り返って、プロクラスで見事に優勝した小林悠馬プロと、惜しくも昨年に続きフィアナルで小林プロに負けてしまいましたが、準優勝という結果を残した山本卓史プロにインタビューしたので、その様子をご紹介いたします。
OCEANS MAGAZINE(以下OM):まず、今回の大会を振り返ってみて、どうでしたか?
山本プロ:今回は、大会実行委員として、またJWAのフリースタイル委員長として、大会を何とか成功させたいと思っていたのですが、両日ともに各クラスの大会を成立させることができ、とても良かったです。
OM:今年はエントリー数も多かったみたいですね。
山本プロ:そうなんです。まず初日のノンプレーニングでは、スペシャルクラスが8名、オープンクラスが18名、ビギナークラスが17名、U-18チャレンジクラスが12名の全部で55名で、昨年に比べると各クラスともに倍くらいに伸びていて、これだけ参加者数も増えてきてくれているので、大会としても少しずつですが、大きくなってきているのが実感できます。
OM:たしか各クラス2ラウンドずつできたんですよね。
山本プロ:そうなんです。これだけの参加者で2ラウンドずつできたので、ギャラリーの方々にもたくさん試合を見てもらえて、とても良かったです。
OM:2日目はどうですか?
山本プロ:2日目も、プロクラスが8名、スペシャルクラスが8名、オープンAクラスが6名、オープンBクラスが15名、ウイメンズクラスが5名と、こちらも増えてきています。
OM:爆風でしたが、1ラウンドは各クラスできましたよね。
山本プロ:そうですね。ちょっと風が吹きすぎでしたが、それでも1ラウンドずつできたので、とても良かったと思います。だから、2日間ともとても充実していて、大会としては一応成功かなと思います。
OM:自身の成績としてはどうですか?
山本プロ:プロクラスが行われた2日目は風がやっぱり吹きすぎて、自分自身のパフォーマンスが全然できなかったので、悔しいです。
OM:でも、あれだけの風速(20~30m/sオーバー)の中でのトレーニングもなかなかできないですよね。
山本プロ:あれだけ吹いちゃうと、もうフリースタイルではなく、ウェイブに切り替えちゃいますからね。そういう意味では、あれだけの爆風の中でのトレーニングは全然できてなかったので、これから風が強くてもフリースタイルの練習は必要だなって思いました。
OM:あと、ファイナルでは、昨年と同じように小林プロと対戦しましたが、それについてはどうでしたか?
山本プロ:やっぱり勝っていけば、必ずファイナルでは悠馬と対戦することになるって思っていたんですが、セミファイナルまでに結構力を出し切ってしまっていたので、疲れていたし、やっぱりきつかったですね。
OM:あれだけの爆風とガスティな中での試合ですからね。相当疲れてたんですね。でも、さすがは地元って言う感じがしましたね。地元の強みを生かしてファイナルまで戦い抜いて、あれだけのパフォーマンスができていたので、さすがだと思いますよ。
山本プロ:ありがとうございます。
OM:小林プロはどうですか?
小林プロ:まず初日は、風も弱くて、ちょっと北風の弱い風だったので難しかったと思いますが、それでも若い選手とかいっぱい出ていて、みんな頑張っていたので、それがとても嬉しかったです。
それと天気も良かったので、試合だけじゃなくて、ビーチイベントも盛り上がったし、ギャラリーもとても多く来ていただいたので、ウインドサーフィンを見てもらう良いきっかけになったと思うし、来年はもっと盛り上げていきたいなと思っています。
OM:2日目は?
小林プロ:2日目はやっぱりちょっと吹きすぎたかなって思いますね。それでも、あれだけの爆風が吹いてにも関わらず、何のトラブルや事故もなく、安全に無事に大会を終わらせることができたのは、運営チームのチームワークがとても良かったからだと思いますし、地元の方々の全面的な協力がなかったら、あそこまでできていなかったと思います。
OM:自分の演技としてはどうですか?
小林プロ:やっぱり風が強すぎて、自分自身の予定していたようなパフォーマンスがあんまりできなかったので、とても悔しいです。それに、これからは大西が吹いても、ウェイブではなく、フリースタイルの練習もしなきゃってつくづく思いました。でも、結果的には地元の、しかも今回のあの爆風の中での試合で勝てて優勝できたので嬉しいですし、応援してくれていたスポンサーの方々をはじめ、周りでバックアップしてくれていた方々に心から感謝しています。
OM:海外の大会に出ていますが、たとえばあれだけの風が吹いてもフリースタイルの大会ってやるんですか?
小林プロ:自分が出てきている大会の中では、あれだけの風が吹いていることはないのでわかりませんが、大きなグランドスラムとかの大会になると、波もでてきてしまうので、ウェイブに切り替えることが多いですね。
OM:ファイナルで昨年と同じ山本プロと対戦しましたが、それについてはどうですか?
小林プロ:誰が相手でも、常に全力でやるしかないっていっつも思っていましたし、それが山本プロにファイナルで当たって、同じ逗子でいつも練習している山本プロだし、地元の大会で、同じ逗子をベースにしている山本プロと対戦できて、とても嬉しかったです。
OM:フリースタイルの大会としては、この逗子の大会がかなり盛り上がってきている、という印象がありますが、やはりお二人の活躍が効いているんですかね?
小林プロ:地元の強みはあるかもしれませんが、でもやっぱり周りの方々のご協力のおかげだと思います。
OM:あと、今回の大会で、10代、20代の参加選手が結構目立っていましたが、そのあたりについてどうですか?
小林プロ:フリースタイルってほかのウインドサーフィンの種目と比べると、ハードルがそんなに高くないと思います。それは、風が弱くてもできるし、少しでも吹いていればプレーニングしなくてもできてしまうので、そんなに危なくないし、子供たちだけでも安心してできる、というのがあると思います。
あとは、この逗子海岸であれば、山本プロをはじめウインドサーフィンのインストラクターや大人のベテランウインドサーファーが多いので、子供たちがやっていても、いつでもアドバイスもできるし、安全面でも見ていられるし、そうした環境が、子供たちを良い形で育ててきていられる、というのがあると思います。
OM:ちなみに小林プロが子供のころはどうでしたか?
小林プロ:自分のほかにウインドサーフィン自体をやっている子供はいなかったので、ある意味、今の子供たちはうらやましいです。
OM:しかもフリースタイルを練習してるなんて子供はいなかったんですもんね。
小林プロ:そうです。フリースタイルをやっている大人のウインドサーファー達はたくさんいましたが、子供でやっているのはいなかったですね。
OM:子供たちの成長という意味では、逗子は本当に良い所なんですね。
小林プロ:そうですね。あと、子供たちがやっていると、またその子供たちが友達を誘ってきてくれるんで、それでお互いがライバルになって切磋琢磨し合えるんで、本当に良い形になってきていると思います。キッズスクールとかも充実してきているし。
OM:あとは身近に小林プロや山本プロもいますしね。
小林プロ:そうですね。なんか海外のような感じですよね。海外だと、放課後にみんな子供たちが海に集まって、みんなでウインドサーフィンとかして、そうした生活が自然になって。それが今、逗子ではそうなってきているんで、とても良い流れになってきていると思います。
OM:それが今回のように大会に参加して、子供たちで盛り上がって、それを見た子供たちがまたやりたくなって、という良い流れができつつあるんですね。
小林プロ:そうなんです。実際に去年に試合に出た子供たちが友達をそのときに連れてきて、その友達がウインドを始めていますからね。
OM:素晴らしいと思います。
小林プロ:この逗子って、あとは風が弱いときでもフリースタイルの練習ができるので、それがきっと基礎練習にもなって、さらにうまくなっているんだと思います。
OM:フリースタイルって風が弱いときに練習すると、すごく練習にもなるし、微風でも楽しくなりますよね?
小林プロ:世界でも、PWAを回っている選手とかは、みんなもともとフリースタイルの選手だったり、フリースタイルでチャンピオンだったりしてる選手がPWAのウェイブを回っていたりするので、フリースタイルってウインドサーフィンの基礎になるんです。だから、ウェイブに憧れている人でも、フリースタイルをやっていると、きっと役に立つと思います。
OM:だから逗子の選手は、フリースタイルも上手いし、ウェイブも上手いんですね。
OM:ちなみに山本プロも、もともとフリースタイルが好きだったんですか?
山本プロ:そうですね。自分はもともと浜名湖の村櫛というところでウインドを20歳のときに始めて、そこもとってもフリースタイルがやりやすいところなので、みんな周りもやっていて、自分もすぐにやりたいと思っていました。でも、浜松の舞阪とかに行けば、ウェイブもできるので、風が吹けばウェイブもやっていましたね。
OM:それでフリースタイルを浜名湖でいつも練習していたんですか?
山本プロ:そうです。もうウインドを始めてプレーニングできるようになったらすぐにフリースタイルを練習して、2年目には大会のビギナークラスにも出ていましたね。
OM:よっぽどハマったんですね。
山本プロ:そうなんです。
OM:それでいつごろ逗子に来たんですか?
山本プロ:30歳のときです。今から4年前ですね。
OM:逗子ってやっぱりフリースタイルがやりやすいところだってすぐに思いましたか?
山本プロ:ほかにあまりポイントを知らなかったというのもあるんですが、でも、ここならやりやすいし、すぐにフリースタイルをやるんだったら、ここが良いなって思いました。
OM:たしかこの大会も今年で4年目ですが、ということは山本プロが逗子にきてすぐにこの大会が開かれたということですね。たしか、この大会の発起人と聞いたんですが。
山本プロ:逗子に来て、すぐにウインドサーフィンを盛り上げる良いアイデアはある?って逗子ウインドサーフィンスクールをやっているウインドプランニングの社長に聞かれたときに、すぐにフリースタイルで盛り上げたい、JWAの大会を開きたいって言いました。
OM:逗子は人も多いですからね。
山本プロ:そうですね。逗子ってまずはウインドサーファーが多いし、駅も近いし、東京からも近いし、きっとここならたくさんの人に見てもらえるんじゃないか、それで、ウインドサーフィンをもっと盛り上げていけるんじゃないかって思いました。
OM:大会4年目にして、徐々に大きくなってきていますね。
山本プロ:はじめは自分の発案だし、自分が頑張らなくちゃって思っていたのですが、社長をはじめ、街の協力だったり、周りの方々の理解やご協力があって、ここまでこれていると思います。
OM:この逗子の大会って街もそうだし、各ショップもひとつにまとまって大会を盛り上げているという印象がありますが。
山本プロ:そうなんです。本当に周りの方々の協力があって、ここまで来れていると思います。
OM:ほかの地域でもこうした形でできると良いですね。
山本プロ:そうですね。今年は海だけではなくて、ビーチイベントもたくさんできたし、それで盛り上がったというのもあるので、本当に感謝しています。
OM:コンディションも最高ですものね。
山本プロ:持っているんですね!(笑)
OM:本当にそうだと思います。自然を味方につけたら強いですからね。
小林プロ:ちなみに今までの4回のうち3回は風も吹いているし、恵まれていると思います。
OM:来年もさらに盛り上がると良いですね。
山本プロ:そうしたいです。
OM:ところで、小林プロは、これから海外の試合も出るんですよね。これからの抱負とか聞かせてもらえますか?
小林プロ:まずは5月に行われるオーストリアの大会に出てきます。昨年は風が足らなくて不成立だったんですが、今年は吹いてくれればと思っています。今年の2月にボネールでトレーニングを積んできた成果を出したいし。あと、今年は海外の試合を2回予定しています。ひとつは、フェルテ・ヴェンチュラと、もうひとつはシルトの大会です。
OM:それ以外も本当は出てみたい?
小林プロ:そうですね。できれば、自分の経験を積むという意味も含めて、もっと出たいです。でも、PWAではこの3戦しかないんです。だから、ヨーロッパの大会にもできれば出れたらなって思っています。仕事の調整が必要ですが。ヨーロッパでは、年間5~6戦行われているので、PWAよりは規模は小さくなりますが、経験という意味で行ってみたいです。それも、できれば、若い選手たちを一緒に連れて行ければもっと良いですね。
OM:若い世代たちに世界を経験させるのも大事ですからね。
小林プロ:そうなんです。自分自身も若い選手たちが下からぐんぐんと迫ってきていて、正直危機感とかもあるし、もっと経験を積んでうまくなって、いつまでも若い選手たちのお手本でいたいって思いますし、若い選手たちにとっても、良い経験になるし、実際に海外でやれば、絶対にその成果はあると思います。
OM:今年のボネールのように。
小林プロ:そうです。ボネールって常に風も4.8㎡~5.3㎡くらいは吹いているし、インサイドは波もなくてポートもスタボーもフラット海面で練習できるし、沖へ行けば波も割れているので、そうした中でも練習もできるので、そんなところってあまりないと思います。しかも世界からトップ選手たちが2月~3月あたりは集まっているので、そうした選手たちと一緒に練習することになるので、それはすごい上達するんです。自分もかなり上達したと思います。
OM:世界のトップ選手たちってどういうトレーニングをしているんですか?
小林プロ:風がいつも吹いているので、いつまでもダラダラ乗っているのではなくて、時間を決めて、その中で集中して練習していますね。朝から吹いていれば朝乗って、そのあと筋トレしている選手もいます。あと、スラロームを取り入れている選手もいますね。PWA選手の中にはスラロームも全戦ではないですが、スラロームの試合にも出て、スピードを出す練習とかしていますね。そういう選手がフリースタイルの上位に食い込んできているんです。
OM:スピードって大事なんですね。
小林プロ:だから、スラロームとかフリースタイルとか、ウェイブももちろんだし、いろいろなことをやるのが結果的にフリースタイルの練習にもつながっているんだと思います。
OM:世界に出て、世界の舞台で活躍する日を楽しみにしています。これからもがんばってください。
小林プロ:ありがとうございます。
OM:山本プロも、毎日インストラクターという大変で忙しいお仕事の中ですが、もっともっと逗子をはじめ、フリースタイルはもちろん、ウインドサーフィンを盛り上げられるよう、これからも応援しています。
山本プロ:ありがとうございます。
以上、インタビューでした。
彼ら二人は、フリースタイル界はもちろん、ウインドサーフィン界には欠かせない二人となっていますし、地元と一緒に大会を盛り上げ、もっとウインドサーフィンが盛り上がることを願っています。
また、山本プロは、本当にまじめで、真剣にこれからのウインドサーフィンのことを考え、フリースタイルという競技を通して何とかウインドサーフィンを盛り上げていきたいと考えているのがよくわかりました。
インストラクターという職業は、単にウインドサーフィンを教えているだけではなく、その楽しさや自然の美しさ、さらには人間的な成長にもつながるような効果をもたらしてくれる、とても大変で立派な職業だと思いますが、そうした大変なお仕事をしている中で、今回のような大会を地元と一緒に盛り上げ、たくさんの方々の理解を得ながらここまできているのは、山本プロの人柄であり、誠実さだと思います。これからも応援していますので、頑張ってください。
あと、小林プロは、まさに日本を代表するプロウインドサーファーであり、これから海外へ出て行って、まだまだ活躍してほしいと思いますし、それを約束してくれています。また、STARBOARDというメーカーの仕事もしながらのプロ活動なので、それもかなり大変だとは思いますが、みんなで応援していますので、頑張ってほしいと思います。また、小林プロを目指して頑張っている若い世代たちにも良いお手本であり、良い刺激となっていると思いますので、いつまでも常に前進している姿を見せていって欲しいと思います。
これからもお二人を応援していますので、頑張ってください!インタビューのご協力、ありがとうございました。
最後に、来年へ向けて一言ずつもらいました。
https://www.youtube.com/watch?v=BXqHUN_npjI&feature=youtu.be
J-100 小林悠馬
スポンサー:STARBOARD、SEVERNESAILS、ON’S、LUCKYISLAND、江戸一、グローバルアイ、GoPro、adidas eyewear、ZEN、CB、ZUSHI WINDSURF SCHOOL
https://www.youtube.com/watch?v=Ymj_Nq1iMlA&feature=youtu.be
220 山本卓史
スポンサー:逗子ウインドサーフスクール、CB surfers、NEILPRIDE、JP
大会の詳しい動画はこちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=ci6W21xyzLw
文・写真:OCEANS MAGAZINE
協力:STARBOARD JAPAN、逗子ウインドサーフィンスクール、CBサーファーズ、ウインドプランニング