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TOYOTA JAPAN CUP 2016インタビュー(須長由季)

2016.02.05

今年の1月15日(金)~17日(日)にかけて、沖縄県八重山郡竹富町小浜島リゾナーレ小浜島にて開催された、JWA JAPAN TOUR 2015-16 SLALOM 第4戦の『TOYOTA JAPAN CUP 2016』のときの選手インタビューについて、これから数回にわたってご紹介したいと思います。

主にプロクラスに出場した選手のインタビューを行い、彼らが今回のレースについて、どのような準備をして、どのようなレース展開を行い、その結果どのような成績を収めることができたか、ということなどについてご紹介したいと思います。

まず初回は、プロウイメンズクラス優勝の須長由季選手のインタビューをご紹介致します。

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まずは、すでにご存じの方も多いかとは思いますが、彼女は、下記のプロフィールをご覧になっていただいてもわかるとおり、2012年のロンドンオリンピックでは、RSX級の日本女子代表として出場したことは記憶に新しいと思います。

また、その前にも、ウインドサーフィンを大学で始めたばかりにも関わらず、新人戦でいきなり優勝したことを皮切りに、インカレでも2連覇を達成し、学生日本一の座を獲ったあとも、国内にとどまらず、アジアや世界でも活躍して、数々の輝かしい成績を残しています。

ウインドサーフィンでも輝かしい成績を残している彼女ですが、とても興味深いのは、大学卒業後には、同じ年齢で、セーリング界ではトップエリート女子選手と言われる近藤愛選手とペアを組み、470級でオリンピックを目指す、という経歴も残しています。おそらく彼女のレースに賭ける精神的な強さとセンス、そして、何よりも勝つことに対する強いこだわりが近藤選手の目に留まり、ペアを組むことになったのではないかと想像できます。

話が少しそれますが、その後近藤愛選手は、須長選手とペアを離れてからも、確実にその実力をつけていき、2006年には世界選手権で準優勝し、2007年には全日本470級ヨット選手権で史上初となる女子組の優勝を飾っています。さらには、海外での大会でも優勝を重ね、世界ランキング1位となり、須長選手がRSX級で出場したロンドンオリンピックには近藤愛選手も田畑和歌子選手とペアを組んで世界ランキング1位という成績で出場して、メダルに最も近い競技として注目されていました。

2012年5月に東京都北区にある味の素ナショナルトレーニングセンターにて開催された、ロンドンオリンピックにおけるセーリング競技の日本代表選手の記者会見では、近藤愛選手と揃って、RSX級女子代表として須長選手も参加しています。

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(写真:K.OGAWA)

さて、その須長選手は、今までRSX級のトレーニングの一環として行っていたスラローム競技を昨年から本格的に始め、サーキットも回り始めるとともに、成績もぐんぐんと伸びていき、日々のトレーニングと持ち前の勝つことに対するこだわりが身を結び、ついに今年のTOYOTA JAPAN CUP 2016では、見事にプロウイメンズクラス優勝という輝かしい成績を残すこととなりました。

まず、今回の勝因について聞いてみましたが、実はあまり大会前のトレーニングは思うようにできておらず、それは、昨年の11月に参加したニューカレドニアでの世界大会のレース中に胸骨を骨折するというアクシデントに見舞われたからだそうです。

また、当然今年行われるリオオリンピックのRSX級の日本代表選考会にも照準を合わせていたこともあり、スラローム競技としての純粋なトレーニングは正直準備不足だったというところもあったようです。

ただし、代表選考会では惜しくも落ちてしまいましたが、その分スラローム競技に対する熱意は熱くなっていたことは事実で、あまり考えすぎずに、気負わずにレースに臨めたことが、かえって良かったのではないか、と本人は語っていました。

大会3日前からレース会場となる小浜島へ入り、連日続く強風の中を考えすぎることなく、とにかくレースに対して楽しんで臨もうという純粋な思いで、先輩たちからのアドバイスを忠実に聞き入れながら、トレーニングに励んでいたそうです。

しかし、いざ大会が始まると、初日は風速不足でまさかのキャンセル。

そして2日目も何とかレースはできたものの12~14ノットと、小浜島でそれまで乗っていた風とは大きく弱まり、レースとしては風が弱い中でのレースとなりました。

須長選手は、第1レースでは、予選ラウンドでは1位を獲ってファイナルへ進んだものの、セイルが7.8㎡とやはり小さく風が足りなかったのか、3位でフィニッシュ。

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(第1レース予選ラウンド。ここから巻き返してトップフィニッシュでファイナルへ進出。セイルナンバー470が須長選手)

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(第1レースのファイナル。セイルが小さくて風が足りないのか、3位でフィニッシュ)

 

そして、第2レースは若干風は上がってきてはいましたが、第1レースの反省をもとにセイルサイズを大きくして8.6㎡でレース海面へ向かうと、思ったよりも風が吹いていて多少オーバー気味という印象。

でも、それが功を奏したのか、予選ラウンドではオーバーセイル気味で少し手こずり、4位と振るわなかったものの、ファイナルへ進むとそれまでのオーバーセイルを武器に、スタートからトップを走り続け、最後まで突っ走ってトップでフィニッシュしていました。

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(第2レースファイナル。このままトップでフィニッシュ)

 

後から聞くと、このときが、やはりとても気持ち良かったと言っていました。勝つことに対するこだわりもあり、セイルとボードのバランスが自分のものとなり、風や波、そして潮など自然のリズムと調和していれば、とても気持ち良く、なおかつレースでも気負うことなく勝てるということを、このときに感じたのかもしれません。

さて、最終日ですが、2日目までとはうって変わって、南寄りの風がかなり強まり、朝から20ノット以上の強風となっていました。

また時折強く降る雨にも悩まされ、視界がほとんど見えなくなるくらいのもの凄く強い雨によって、なかなかレースが始められない状況ではありましたが、須長選手を含む選手たちはみんなレースのモチベーションを落とさずにぐっと風や雨が落ち着いてくるのを待ち続け、午前10時30分頃にプロクラスの第3レースがスタートしました。

ウイメンズプロクラスもメンズプロクラスの後にスタートして、須長選手も予選ラウンドでは順調に大西富士子選手に続いて2位で通過してファイナルへ進みました。

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(第3レースの予選ラウンド。順調に2位でフィニッシュしてファイナルへ進出)

ファイナルでは、強風の中を5.6㎡のセイルを使ってスタートから順調に飛び出し、途中までトップをキープしていましたが、後からぐんぐんと迫ってくる大西富士子選手の追い上げに最後は踏ん張ることができず、最後の最後でトップを奪われてしまっていました。

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(第3レースファイナルでは、最終マークまでトップを維持するものの、マーク回航後、大西富士子選手に最後の最後で抜かれ、2位でフィニッシュ)

さずがにこうした強風の中でのレースということと、前日のレース展開が思ったよりもうまくいっていたこともあり、多少緊張して気負いしてしまった、という反省もあったようです。

でも、最後まで集中力を欠かすことなく、終始自分のペースでレース運びをすることができ、その結果、安定した成績で総合優勝をもぎ取ることができたのではないかと思います。

まだまだスラローム競技という世界においては、経験年数が少ないかもしれませんが、彼女の今までの経験や実績、そして精神力、何よりもレースにおけるセンスや持ち前の勝つことに対する強いこだわりがあれば、まだまだ伸びて行くことは間違いないと思われます。

彼女自身も、今年もさらにスラローム競技に対して真剣に本腰を入れてトレーニングを続け、できればサーキット「全戦優勝」して、海外でも活躍していきたい、と願っているようです。

良い成績を獲りたい、というのではなく、「優勝したい」「勝ち続けたい」という言葉が出るところあたりも、彼女の”勝ち”に対する強い想いが伝わってきます。

まだまだ成長し続け、活躍して、日本にとどまるような選手ではないという印象を持っている彼女なので、これからの活躍に非常に期待していきたいと思います。

 

文:OCEANS MAGAZINE

写真:HARRY

 

※TOYOTA JAPAN CUP 2016の全レースレポート、および全動画については以下をご覧ください。

http://oceansmagazine.net/feature/4946

 

<須長由季>

○プロフィール

  • 出身地:埼玉県
  • 身 長:171cm
  • 体 重:62kg

 

○経歴

  • 1999年 私立星野女子高等学校 卒業
  • 2003年 私立明治大学 卒業
  • 2003年 株式会社ミキハウス入社 競技部 兼 藤沢さいか屋店 勤務
  • 2009年 競技部 兼 横須賀さいか屋店 勤務
  • 2011年 競技部 兼 横須賀さいか屋店勤務 兼 東日本支社勤務

 

○戦歴

  • 2015年 世界選手権オマーン 27位
  • 2015年 ISAFセーリングワールドカップ イギリス大会 RS:X 女子 9位
  • 2012年 ロンドンオリンピック 21位
  • 2012年 世界選手権 27位(オリンピック内定)
  • 2011年 2011年度ナショナルチーム選考会 1位
  • 2011年 日本セーリング連盟ナショナルチーム選考会 RSX級 優勝
  • 2011年 世界選手権 33位(ロンドン五輪国枠獲得)
  • 2010年 ヨーロッパ選手権 25位(日本人2位)
  • 2010年 デルタロイドレガッタ(ISAFワールドカップシリーズ) 25位(日本人2位)
  •  2010年 Sail for GOLD レガッタ(ISAFワールドカップシリーズ) 23位(日本人1位)
  • 2010年 RSXクラス 2010年世界選手権 33位(日本人2位)
  • 2010年 2010年アジア選手権 2位(日本人1位)
  • 2010年 2010年全日本選手権 1位
  • 2010年 Sail Melbourune(ISAFワールドカップシリーズ) 11位(日本人1位)
  • 2010年 全日本RSX選手権 RSX級 優勝
  • 2008年 世界選手権 RSX級 日本人3位
  • 2007年 世界セーリング連盟選手権 RSX級 北京五輪国枠獲得
  • 2006年 全日本フォーミュラー選手権 フォーミュラー級 優勝
  • 2005年 全日本ミストラル選手権 ミストラル級 6位
  • 2004年 世界選手権 470級 日本人3位
  • 2003年 日本セーリング連盟ナショナルチーム選考会 470級 3位
  • 2002年 全日本学生ボードセーリング選手権大会 ミストラル級 優勝
  • 2001年 全日本学生ボードセーリング選手権大会 ミストラル級 優勝
  • 2000年 全日本学生ボードセーリング選手権大会 ミストラル級 8位
  • 1999年 全日本学生ボードセーリング選手権大会 新人戦  ミストラル級 優勝

 

 

 

 

 

 


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