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2225マイル完走!〈ラガマフィン100〉トランスパック2015参戦記/バルクヘッドマガジン

2015.08.05

2年に一度開催される太平洋横断「第48回トランスパックヨットレース」が今年も盛大に開催されました。ロス〜ハワイまで2225マイルを走るこの オフショアレースに、日本から〈ジュリアン〉(J/120)、〈クレセント3〉(S40)、〈フォルテシモ2〉(Feet30)の3艇が出場。また、オー ストラリア籍で沖縄東海ヨットレースに出場したことのある〈ラガマフィン100〉(Super Maxi)には、日本人セーラー5名が乗り込みました。この100フィートマキシ、ラガマフィンに同乗した吉田工作選手から参戦レポートが届いたので紹介 します。(BHM編集部)

初オフショアレース、初スーパーマキシのビッグチャンス!

この大会は20世紀初めに始まり、100年以上の歴史がある世界で最も古い太平洋横断ヨットレースで、今年は約60艇の参加艇がロサンゼルスのロ ングビーチ沖からハワイまで約2200マイルを帆走しました。そして僕はオーストラリアのラガマフィンチームで、当大会に参戦することができました。 (文・写真提供/吉田工作)

このチームは、かつて自己資金でヤングオーストラリアを3度アメリカスカップに送り込んだシド・フィッシャーがオーナーを務めるシドニーの名門 チームで、ジェームス・スピットヒルやイアン・ウォーカーらも若い頃このチームに所属しており、まさにオーストラリアの一流セーラーの登竜門のような存在 です。今回は100フィートということもあり20人(2ワッチ制)のクルーが乗り込みますが、メンバーもまた錚々たる面々でした。

18フッター3度のワールドチャンピオンであり、セーリングマネージャーのデイビッド・ウィットは、今年ボルボ優勝チーム〈アブタビ〉からのオ ファーを蹴ってラガマフィンの年間キャンペーンに従事し、またボルボ5回出場(1回目は18歳でスキッパー)のマット・ハンプフリー、エクストリーム40 のGAC Pindarでタクティシャンを務めるジャック・マカートニー、レーザーのマスターズワールドチャンピオンのヴァネッサ・ダッドリーを含む6名がドライビ ング&メイントリムチーム、

また、GBR、ヤングオーストラリア、ワンワールドでそれぞれ数度のアメリカスカップ経験のあるジョン・フィッシャー(ヘッドセール)、マット・ ピース(ピット)、アンドリュー・クローウィ(ナビゲーター)、キャンベル・ノックス(回航&ランナー)らもその20名のクルーの中に名を連ねて います。

今回はこのメンバーの中に日本人が5名乗り込みました。まず、このトランスパックキャンペーンのスポンサーを務めた FUKU BLD. の福本明達社長と、5年前からラガマフィンチームに所属する稲葉健太と寺川智子、そして日本の若手セーラーとして森田栄納介、吉田工作の5名です。

今回は僕にとって「初オーバーナイト、初外洋レース、初スーパーマキシ」という、なんともあり得ないビッグチャンスで、しかも自分でもビックリのドライビングチーム配属により緊張の連続でした。

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スーパーマキシで日本人セーラーが健闘しました。写真左から稲葉健太、吉田工作、福本明達、森田栄納介

20ノット強の風の中、100フィートのナイトセーリングは怖くて足が震えた

7月11日に森田栄納介とともに日本を発ち、ロサンゼルスでチームと合流後、セールチェック、ワーク、コミュニケーションの確認で1週間のトレーニングを行いました。

全長47mのマストは、あまりに巨大で、どこか観客のような気持ちで最初は驚いておりましたが、練習初日の最初のドライバーを任されたとき、一気スイッチが入りました。

フォアデッキを務めた森田栄納介は、普段あまり経験のないポジションながらも、それをそつなくこなし、先を読むアクションと約200kgある10 枚近いヘッドセールとジェネカーを全てチェックするというハードな任務とコンディションの中でずぶ濡れになりながらアフターガードからのオーダーに必死に 応え、チームからも「モーリー」の愛称で親しまれ、高評価を得ました。

僕はメイントリム&ドライビングチームの中で、0.1ノットでも速く走らせることに集中を続けました。最初はチームのメンバー1人ひとり のブランドに圧倒されていた部分もありましたが徐々にリラックスでき、「なにか爪痕を残して帰ろう」と強く意識して本番に臨むことができました。

スタート日は13日、15日、18日の3グループに分けられ、ラガマフィンチームは最終グループの18日午後1時スタートでした。当日は多くの観覧船がスタートラインに集まり、ヘリコプターが飛び回る中でスタートでした。

最初のグループは太平洋上の2つの台風の影響を少し受けながらレグを進みますが、3グループ目の私たちはうってかわっての微風続きで、大型艇に とっては総合成績は期待できず、ラガマフィンチームの目的は、同じ100フィートである〈リオ100〉〈ワイルドオーツ〉の2艇に勝つこと。これに絞られ ました。結果的には、オーナーであるシド・フィッシャーの生涯最大のライバルであるワイルドオーツに敗れてしまいました。

フィニッシュは、25日の深夜3時30分ごろ。いたって静かな幕切れではありましたがしたが、やはりハワイの夜景が見えた瞬間は感慨深いものがあ りました。今回のチャレンジは特別に前から描いていた目標というわけではありませんでしたが、「掴めるチャンスは全て掴む」。そして今後若手が世界に出る ためのメンタルブロックを壊すことができたらと思い挑戦しました。

おかげさまでとてもいい経験になり、特に20ノットを超える風の中、100フィートのナイトセーリングでのドライビングは怖くて足が震えているのが自分でもわかりましたが、なんとか「Good job」の言葉を頂けました(詳しくは当方Facebookにて)。

ラガマフィンチームの次のプロジェクトは、10月の香港〜ベトナムヨットレース、そして年末のシドニーホバートヨットレースと続きます。自分の爪痕が残せたかどうかは、次回にまた召集がかかるかどうかで証明されることかと思います。

◎ラガマフィン100動画レポート
https://www.facebook.com/kosaku539/videos/vb.100003631753973/649570795173973/?type=2&theater

◎ 48TH TRANSPAC
http://transpacyc.com/

 

バルクヘッドマガジンより

http://bulkhead.jp/category/news/


OCEANS WATCHER

小川和幸

気象予報士、オーシャンプロデューサー
出生地 東京都目黒区
居住地 神奈川県茅ケ崎市在住
WATER KIDS JAPAN代表
OCEANS MAGAZINE編集長
特定非営利活動法人EARTH WIND & WAVE CLUB理事長

OCEANSMAGAZINE facebookページhttps://www.facebook.com/pages/Oceansmagazine/1503862653179360

大学では体育会ヨット部に入部し、副将として部員をまとめるとともに、大会では学生選手権大会で優勝し、全日本選手権大会では総合6位入賞という結果をもたらす。
その後、卒業とともにウインドサーフィンの魅力に魅せられ、それ以来、20年以上続ける。また、趣味を仕事にと、マリンスポーツ雑誌の老舗マリン企画へ入社し、ウインドサーフィン専門雑誌であるHi-Windで8年間広告営業として働く。
また、Hi-Wind時代に気象予報士の資格を取得し、世界最大の気象会社ウェザーニューズ社を経て老舗波情報である波伝説(サーフレジェンド社)へ転職して、14年間、海専門の気象予報士として働く。その間には、ラジオやTVで海の気象情報を伝えながら、日本国内におけるWCTやWQS(プロサーフィン世界大会)、プロウインドサーフィン大会、遠泳では湘南オープンウォータースイミング大会などのオフィシャル気象予報士として、マリンスポーツにおける海専門の気象予報のプロとして活躍。

現在は、独立してWATER KIDS JAPANを設立し、海の気象情報アプリ「ISLANDS WATCH」を企画・運営中。
また、特定非営利活動法人「EARTH WIND & WAVE CLUB」も立ち上げ、地元茅ヶ崎や奄美大島にて、その日のコンディションに合わせてマリンスポーツを楽しみながら、子どもから大人までに海の素晴らしさや奥深さを伝えている。

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