小川和幸info
WML Victoria Cup HAYAMA PRO スプリントトーナメント終了!
2015.09.06
さて、WATERMAN LEAGUE WORLD SERIES 「Victoria Cup HAYAMA PRO」では、きょうの午前中に行われた6kmレースに続いて、午後は3つのブイを回ってゴールするという、全長600mのスプリントトーナメントが行われました。
このスプリントトーナメントは、昨年の茅ヶ崎で開催されたチャレンジシリーズでも行われ、ビーチ際のすぐそばでレースが展開されるので、とてもわかりやすいとともに、白熱した、エキサイトなレースとなっています。
会場では、レースがスタートする頃になると、北東寄りの風だったのが徐々に東~南東寄りの風に変わってきていました。ただし、面への影響はほとんどなく、真の実力が問われるシビアなレース展開となっていました。
このスプリントトーナメントには、海外からのトップ選手たちも出場し、彼らに胸を借りて、日本のトップ選手たちも挑みます。
まず、第1レースで目立ったのは、やはりきのうの10kmレースで見事に優勝したCONNOR BAXTERです。
彼は余裕で1位で通過し、スタートダッシュから抜けて出たあとは、そのまま第1マークを通過し、その後はリードを保ったまま、まるでウォーミングアップでもしているかのような、ゆったりとした漕ぎ方で、それでも、下位の選手との差をぐんぐんとつけ、最後には約100m近い差をつけ、余裕の1位で通過。
また、きのう2位となったKAI LENNYも、同じようにスタートはものすごく迫力のあるダッシュを見せるものの、その時点でほかとの差をつけ、レースは歴然とした展開で、その後はゆったりと、その後のレースに影響させないためかのように漕ぎ、余裕の1位通過していました。
我らが日本の金子ケニーも、それ以外のレースでは、だいたい上位に海外選手が入り、下位には日本人選手同士の戦いとなっていた中で、ケニーだけは、上位の海外選手の中で見事に戦い抜き、2位で通過していました。
第2レースも同じような展開で進み、その後、クオーターファイナルのあとのセミファイナルでは、唯一日本人として残っていた金子ケニーでしたが、惜しくも4位となり、ここで姿を消すこととなっていました。
ファイナルは、CONNOR BAXTER、KAI LENNYのほかに、ヨーロッパチャンピオンのCASPER STEINFATH、きのう3位となったARTHUR ARUTKIN、ZANE SCHWITZER、KODY KERBOXの6名。
誰が勝っても不思議ではないこの戦いで、果たして優勝は誰になるのか?
それまでの戦いとは一転して変わり、レース前には全員が集中してレース展開をイメージしているかのように、静かに瞳の奥だけが炎のように燃え上っているように見えていました。
スタートダッシュでまず抜け出たのが、それまで好調だったCASPER、KAI、CONNORの順。
インサイドの第2マークを回るまでは、この3名が団子となり、わずかにCASPERがリードしていました。
ただし、第2マーク回航で、CASPERのわずかに後ろを走っていたCONNORがCASPERとKAIのインをついて前へ出て、CONNOR、CASPER、KAIの順となりました。
途中CASPERがCONNORを抜いたものの、アウトの第3マークを回ってからのKAIの集中力とその追い上げが尋常ではなく、わずかにある風波や、うまく前の走った選手の引き波を使いながらぐんぐんと追い上げ、まずはすぐ前を走っているCONNORを抜き、さらには先頭のCASPERまで最後の最後で抜き去るという、劇的なレース展開を見せつけ、会場のボルテージは最高潮に達した中で、見事にゴールして1位をもぎ取りました。
最後の瞬間までわからないというレースではありながらも、このスプリントトーナメントでは、ほとんどがスタートで決まってしまう、というジンクスを見事に打ち破ったKAI LENNYのドラマを眼のあたりにして、ギャラリーはその余韻をいつまでも楽しみ、その場からもしばらくは離れられない状況となっていました。
体つきはそんなにムキムキのキン肉マンでもなく、どちらかというと線の細い細マッチョといった感じの体を持ったKAI LENNYでしたが、おそらく体幹の鍛え方が半端ではないのか、どこからそんなパワーが出てくるのかがわらからないというのが正直なところですが、でも、これから集中させなければならないレース直前でも、レース後の疲れている中でも、また、レースの反省などをする間もなく、リクエストがあれば快くいつでもファンサービスに徹し、笑顔を忘れないナイスガイなだけに、彼の虜になってしまった女子はもちろん、男子も少なくはなかったのではないかと思います。
また、日本人として最後の最後まであきらめずに、世界のトップ集団にまともに戦うことができた金子ケニーですが、今回は惜しくも10kmレースが7位で、スプリントトーナメントが10位、総合でも9位という成績を残した彼は、最後にこう語っていました。
「いつも僕たちがやっているロングディスタンスのレースと、このスプリントトーナメントは全くの別物で、このレースに勝つためには、全く別のトレーニングや経験などが必要。
SUPの歴史がまだ浅い日本では、こうしたレースがまだなく、それに対してどうしたら良いかということが言える選手もいないことが、敗因のひとつだと思う。
スタートダッシュでほぼ決まってしまうのもあり、そのスタートダッシュで前に出れれば勝てる自信はあるし、前に出ることもできるということを証明したかった。
だから1レース目も2レース目も手を抜かずに、前に出ることだけに集中して走ったつもり。
ただし、それだけではこのレースに勝つことはできず、もっと経験と実績を積む必要がある。
だから、自分はWATERMAN LEAGUEを周りたいと思っています。それに、そうした日本人が出てくることが、日本のSUPをもっと普及させ、レベルを上げ、引っ張っていくことが必要だと思っています。
自分はそれができるひとりだし、それを目指して若い世代の人たちにも夢や希望を持ってもらって、もっともっと日本のSUP界の層を厚くしていきたい。」
と語ってくれていました。
きょうの戦いぶりを見ても、村林知安選手も世界で戦える選手の一人だし、ほかにももっと世界で戦えばきっと面白い展開が待っているのでは、とおもえる選手もたくさん出てきていると思います。
でも、その中でもケニーは世界と対等に戦えるところまできっと来ているのだと思います。
また、彼らを引っ張っていく存在であるし、彼らを目標としているさらに若い世代に対しても影響力のある選手なので、世界を周って、世界のトップ3に入り、表彰台の一番高いところに登ってほしい存在であり、その可能性は十分にもっていると思います。
まだ最終日となるあすを残すのみとなりましたが、まだまだ世界のトップ選手を見るチャンスはありますので、ぜひ会場まで足を運んでいただき、ぜひ日本のSUPの現状や、世界のSUPの雰囲気だけでも味わっていただければと思っています。
ちなみにあすは、南海上の前線が再び西から伸びてきそうなので、雲が多く、後半は雨が降りやすいでしょう。
風は前線の位置次第ですが、北東寄りで、後半は南寄りに変わる可能性もあります。
ただし、どちらもあまり強まることはないでしょう。
WORLD SERIES SPRINT RACE MENS RESULT
1.KAI LENNY(HI、NAISH)
2.CASPER STEINFATH(DK、NAISH)
3.CONNOR BAXTER(HI、STARBOARD)
4.ZANE SCHWEITZER(HI、STARBOARD)
5.KODY KERBOX(HI)
6.ARTHUR ARUTKIN(FR、FANATIC)
10.KANEKO KENNY(JPN、SIC MAUI)
13.MURABAYASHI TOMOYASU(JPN、STARBOARD)
13.YOSHIDA RYUHEI(JPN、SAWARNA)
OCEANS MAGAZINE編集長
小川(気象予報士)
最新記事
OCEANS WATCHER
小川和幸
気象予報士、オーシャンプロデューサー
出生地 東京都目黒区
居住地 神奈川県茅ケ崎市在住
WATER KIDS JAPAN代表
OCEANS MAGAZINE編集長
特定非営利活動法人EARTH WIND & WAVE CLUB理事長
OCEANSMAGAZINE facebookページhttps://www.facebook.com/pages/Oceansmagazine/1503862653179360
大学では体育会ヨット部に入部し、副将として部員をまとめるとともに、大会では学生選手権大会で優勝し、全日本選手権大会では総合6位入賞という結果をもたらす。
その後、卒業とともにウインドサーフィンの魅力に魅せられ、それ以来、20年以上続ける。また、趣味を仕事にと、マリンスポーツ雑誌の老舗マリン企画へ入社し、ウインドサーフィン専門雑誌であるHi-Windで8年間広告営業として働く。
また、Hi-Wind時代に気象予報士の資格を取得し、世界最大の気象会社ウェザーニューズ社を経て老舗波情報である波伝説(サーフレジェンド社)へ転職して、14年間、海専門の気象予報士として働く。その間には、ラジオやTVで海の気象情報を伝えながら、日本国内におけるWCTやWQS(プロサーフィン世界大会)、プロウインドサーフィン大会、遠泳では湘南オープンウォータースイミング大会などのオフィシャル気象予報士として、マリンスポーツにおける海専門の気象予報のプロとして活躍。
現在は、独立してWATER KIDS JAPANを設立し、海の気象情報アプリ「ISLANDS WATCH」を企画・運営中。
また、特定非営利活動法人「EARTH WIND & WAVE CLUB」も立ち上げ、地元茅ヶ崎や奄美大島にて、その日のコンディションに合わせてマリンスポーツを楽しみながら、子どもから大人までに海の素晴らしさや奥深さを伝えている。