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小川和幸info

世界のナクラ17級の現状。リオ五輪テストイベント5日目/バルクヘッドマガジン

2015.08.21

8月19日、ブラジル・リオデジャネイロで開催されているリオ五輪テストイベント5日目。ワールドカップならメダルレースを含めて5日間と決まっ ていますが、本大会ではクラスごとにスタート日、終了日が異なり合計8日間おこなわれます。来年のリオ五輪本番は11日予定されているので、さらに長い期 間になります。(BHM編集部)

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リオに期待された風は吹かず。大会5日目まで軽風シリーズになっています。写真は外海に出て最も遠いエリアでおこなわれた470級。photo by Junichi Hirai

5日目のリオも前日同様に風弱く、全種目のレースが予定されていましたが、ナクラ17級、RS:X級男女以外は陸上待機ではじまりました。ナクラ17級は弱い風で2レースおこなわれ、オーストラリアが連続トップで首位へ。オランダ、ドイツと僅差で並びます。

カタマランのナクラ17級は昨日紹介した49er級FXと同じく、リオ五輪から採用される新種目です。北京五輪でマルチハル種目のトーネード級が 消え、女子マッチレースに変わりましたが、マッチレースはロンドン五輪1度だけでなくなり、五輪のために開発されたナクラ17級が採用されました。

ナクラ17級の特長は五輪セーリング種目で唯一の男女混合種目であること。スキッパーが女子のチームもあれば、その逆もあり。首位のオーストラリ アチームは男子スキッパーですが、2位のオランダは女子スキッパー、ドイツは男子、ニュージーランドは女子…とチームによってまちまち。お互いの個性を活 かしたチームが組まれています。

カタマランは日本では馴染みのない種目ですが、ISAFユースワールド種目やアジア大会でも採用されいていることからも世界で普及するカテゴリー といえます。日本はこのテストイベントに出場していませんが、後藤浩紀/田畑和歌子(チームアビーム)が活動していて、9月中国で開催されるアジア大陸枠 選考(ISAFワールドカップ青島大会)で五輪出場を狙います。

いくつかの国際大会や世界選手権でこのクラスを見てきた感想は、まずカタマランというスピードボートの特性から独特のヨットレースがおこなわれる ということ。このテストイベントのコースは上・下のマークを周回。上マークにはヒッチマークが設けられ、下マークはゲート、フィニッシュは風下へ流し込み となります。1年半前にはじめてナクラを見た時は、特に風が吹き上がると他国の選手たちは船に乗るだけで精一杯、という印象でした。昨年の世界選手権で も、風が上がると上マークからヒッチマークまでバウダウンできない選手が続出していたのを覚えています。

しかし、今春に見たISAFワールドカップ・イエール大会のメダルレースは、選手のセーリング技術が飛躍的に進化していました。強風のボートハン ドリング性能があがり、ポートアプローチから上マーク回航する華麗な姿はまさに芸術的で、トップ選手の技量が一段と上がっているのが分かりました。船の性 能を知るため試行錯誤を繰り返し、セッティング方法も安定してきたのだろうと感じています。

いまナクラの世界でいちばん速い選手は、まぎれもなくフランスのビリー・ベッソン/マリエ・リオウです。このチームはナクラ17級がはじまってか ら三連続で世界選手権を制している怪物チームです。しかし、本大会では現在5位。軽風シリーズとなっているリオの風と強い潮に翻弄されています。

大会5日目はナクラ17級とフィン級のみ2レースを実施。その他のクラスは1レースで終えました。RS:X級男女は全レースを実施できずに予選終 了となり、富澤 慎は20位、須長由季は16位となりました。明日のRS:Xは上位10艇によるメダルレースがおこなわれます。また、その他のクラスもスタート時刻を早め ておこなわれる予定です。

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マリーナ・デ・グロリアの東端にある470級のバース。photo by Junichi Hirai

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ジュリーは五輪を模して各国1名と決まっています。日本からはJSAFルール委員会の増田開さんが参加しています。photo by Junichi Hirai

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ナクラ17級のスタートではISAFワールドカップ・ウエイマス大会でおこなわれた旗によるカウントダウンが採用されました。5分前から時間を知らせる数 字の旗が合図になります。今後、ISAFの主流になるのかはまだ分かりませんが、オリンピック本番を意識したスタート方式です。photo by Junichi Hirai

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ナクラ17級のスタート。中央のスペインはボルボオーシャン世界一周レースで〈Mapfre〉のスキッパーを務めたイケール・マルティネス。いま、世界の トップセーラーは、オリンピックとアメリカズカップ、ボルボオーシャンレースを重複して活動しています。ものすごいエネルギーです。photo by Junichi Hirai

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軽風で強い首位のオーストラリア(ジェイソン・ウォーターハウス/リサ・ダーマニン)。これまで同国のライバルであり、前回アメリカズカップでオラクルチームに所属していたダレン・バンドックは出場していません。photo by Junichi Hirai

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富澤 慎は最終レースを5位を獲得。軽風のパンピング・コンディションは得意な風域です。今回は首の故障もあり大会を20位で終えました。photo by Junichi Hirai

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470級は最も遠いエリアで1レースだけ実施しました。土居一斗/今村公彦は14位で10位に後退。photo by Junichi Hirai

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470級女子の吉田 愛/吉岡美帆は14位を取って総合10位へ。外海でおこなわれた470級は波が高いが風は弱い、というハンドリングのむずかしい海面でした。photo by Junichi Hirai

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夕方、帰着する時間には空に厚い雲がたちこめ、壮観な景色があらわれました。手前はシュガーローフで遠くにキリスト像が見えます。photo by Junichi Hirai

◎ISAF Aquece Rio International Sailing Regatta 2015
http://www.sailing.org/olympics/rio2016/home
◎Aquece Rio
http://www.aquecerio.com/

470級男子 参加22艇
1. CRO Sime Fantela / Igor Marenic 3-(7)-7-1-1 12.0p
2. USA Stuart Mcnay / David Hughes 6-2-1-(9)-5 14.0p
3. FRA Sofian Bouvet / Jeremie Mion 5-3-(6)-3-6 17.0p
10. JPN 土居一斗/今村公彦 11-5-5-(23)-14 35.0p

470級女子 参加18艇
1. USA Anne Haeger / Briana Provancha 2-2-3-(6)-2 9.0p
2. GBR Hannah Mills / Saskia Clark 6-1-(11)-1-3 11.0p
3. CHN Shasha Chen / Haiyan Gao 1-3-2-13-(16) 19.0p
10. JPN 吉田 愛/吉岡美帆 (19)-10-6-4-14 34.0p

49er級男子 参加20艇
1. NZL Peter Burling / Blair Tuke 2-6-1-(12)-1-1 11.0p
2. AUT Nico Delle Karth / Nikolaus Resch 5-2-7-2-4-(11) 20.0p
3. ESP Diego Botin / Iago Lopez Marra 1-4-8-5-(10)-4 22.0p
13. JPN 牧野幸雄/高橋賢次 12-12-11-(14)-8-13 56.0p

49er級FX女子 参加19艇
1. ITA Giulia Conti / Francesca Clapcich 1-2-3-(10)-4-2-6 18.0p
2. BRA Martine Soffiatti Grael / Kahena Kunze (20)-3-2-2-3-1-14 25.0p
3. ARG Victoria Travascio / Maria Sol Branz 2-7-4-1-5-6-(17) 25.0p
17. JPN 松苗幸希/原田小夜子 17-(19)-16-17-11-13-7 81.0p

レーザーラジアル級女子 参加28艇
1. LTU Gintare Volungeviciute Scheidt (10)-3-8-1-7-1-9 29.0p
2. USA Paige Railey 13-1-(29)-2-8-3-6 33.0p
3. BEL Evi Van Acker 15-13-4-4-4-(22)-2 42.0p
15. JPN 土居愛実 1-(21)-16-16-13-17-17 80.0p

RS:X級男子 参加28艇
1. CHN Aichen Wang 4-1-1-1-2-(5)-1-1-4 15.0p
2. FRA Pierre Le Coq 1-6-5-3-3-(9)-5-8-1 32.0p
3. GRE Byron Kokkalanis 7-(17)-6-2-6-1-10-4-2 38.0p
20. JPN 富澤 慎 20-19-19-(25)-20-25-15-16-5 139.0p

RS:X級女子 参加20艇
1. FRA Charline Picon 1-7-6-2-11-1-(13)-1 29.0p
2. POL Malgorzata Bialecka 3-2-3-5-4-8-4-(9) 29.0p
3. ESP Blanca Manchon 4-4-5-7-2-6-(21)-3 31.0p
16. JPN 須長由季 17-(20)-10-8-18-15-14-16 96.0p

バルクヘッドマガジンより

http://bulkhead.jp/category/news/


OCEANS WATCHER

小川和幸

気象予報士、オーシャンプロデューサー
出生地 東京都目黒区
居住地 神奈川県茅ケ崎市在住
WATER KIDS JAPAN代表
OCEANS MAGAZINE編集長
特定非営利活動法人EARTH WIND & WAVE CLUB理事長

OCEANSMAGAZINE facebookページhttps://www.facebook.com/pages/Oceansmagazine/1503862653179360

大学では体育会ヨット部に入部し、副将として部員をまとめるとともに、大会では学生選手権大会で優勝し、全日本選手権大会では総合6位入賞という結果をもたらす。
その後、卒業とともにウインドサーフィンの魅力に魅せられ、それ以来、20年以上続ける。また、趣味を仕事にと、マリンスポーツ雑誌の老舗マリン企画へ入社し、ウインドサーフィン専門雑誌であるHi-Windで8年間広告営業として働く。
また、Hi-Wind時代に気象予報士の資格を取得し、世界最大の気象会社ウェザーニューズ社を経て老舗波情報である波伝説(サーフレジェンド社)へ転職して、14年間、海専門の気象予報士として働く。その間には、ラジオやTVで海の気象情報を伝えながら、日本国内におけるWCTやWQS(プロサーフィン世界大会)、プロウインドサーフィン大会、遠泳では湘南オープンウォータースイミング大会などのオフィシャル気象予報士として、マリンスポーツにおける海専門の気象予報のプロとして活躍。

現在は、独立してWATER KIDS JAPANを設立し、海の気象情報アプリ「ISLANDS WATCH」を企画・運営中。
また、特定非営利活動法人「EARTH WIND & WAVE CLUB」も立ち上げ、地元茅ヶ崎や奄美大島にて、その日のコンディションに合わせてマリンスポーツを楽しみながら、子どもから大人までに海の素晴らしさや奥深さを伝えている。

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