小川和幸info
【コラム】英ワールドカップとナショナルアカデミーに見るセーリングの近未来!/バルクヘッドマガジン
2016.06.13
6月12日、「セーリングワールドカップ・ウェイマス&ポートランド」最終日は、各クラス上位10チームによるメダルレースがおこなわれ、RS:X級以外をライブ中継する大掛かりなイベントとなりました。(BHM編集部)
セーラーズカードで盛り上がる子どもたち。photo by Junichi Hirai
北京五輪から始まったメダルレースは、ロンドン、リオ、そして東京へと継続されていきそうです。ワールドセーリングが考えているのは、ワールド カップによるセーリング競技のプロ化であり、さらにメダルレースのライブ中継を世界へ配信していこうという流れにあります。ワールドセーリングは、このラ イブ中継を(例えばアメリカズカップのように。アメリカズカップが成功しているのか分かりませんが)興行していきたいという思惑もあるようです。
過去のオリンピック艇種問題(メディア受けする艇種を選ぶ)しかり、テレビ放映を意識した競技へ進む流れは、みなさんも予想できるでしょうが、実 際にはまだまだ発展途上です。こうした考えを打ち出しているのはワールドセーリング(本部はイギリス・サウサンプトンにあります)であり、セーリング大国 イギリスの意思が反映されています。
イギリスは、4人にひとりがセーリング経験があると聞いたことがあります。まわりを海に囲まれた島国にも関わらず、セーリング文化が育まれなかっ た日本と合致しない部分があるのは当たり前で、どちらが良い悪いというのではなく、わたしたちが「セーリングはこういう流れに進もうとしている」ことを 知っておくのは間違いではないと思います。
編集長がこの大会を取材していて驚いたことがあります。これは先の記事にも書きましたが、本大会が開催されている「ウェイマス&ポートランド・ナショナルセーリングアカデミー」にたくさんの子どもたちが、水辺スポーツを学ぶために訪れています。
詳しい方に話を聞くと、ジュニアからユースまで学校単位でおこなわれる臨海学校のようなもので、一週間ほど宿泊施設に泊まって自然やスポーツについて学ぶプログラム。そのなかで水辺スポーツが取り入れられていて、ここで全員がセーリングを体験するのだそう。
こうした事業の運営費は国が負担していて、子供たちの水辺教育につかわれ、ナショナルセーリングアカデミーや全英のヨットクラブで働く人たちの給 料になるとのこと。国民が水辺スポーツに親しむ文化は、こうして作られ、まわりに支えられ継続していくのかと感心しました(また、ナショナルセーリングア カデミーについて、機会があれば詳しく取材してみたいと思いました)。
もうひとつ驚いたのが、メダルレースを見に来たジュニアセーラーたちが、セーラーズカードを手にしていたこと。これは、イギリス(GBR)ナショ ナルチーム写真がプリントされたポストカードで、子どもたちがカードを持って好きな選手にサインをねだるわけです。陸で待っている子どもたちは、「ジル・ スコット、ジル・スコットがいい」と一番人気はフィン級の世界チャンピオンのようで、口をそろえてはしゃいでいました。
日本では考えられない光景に、正直に言って驚きました。セーラーのプロ化をすすめるワールドセーリングの考え方は、ことイギリスでは現実的なこと なのかもしれないし、同様にRYA(イギリスヨット協会。日本のJSAFにあたる)が、セーラーズカードを制作して子どもたちに配布していることにも驚か され、もし日本選手が金メダルを取ったり、世界チャンピオンが誕生したら、こんなシーンが見られるのかな? と想像してみたりしました。
日本では考えにくい「驚き」です。子どもたちが学校の教育のなかで水辺スポーツ(ひとり乗り、二人乗りのディンギーやウインドサーフィン、カ ヌー、ドラゴンボート等)を遊びながらでも体験して、セーリングをはじめたジュニアセーラーは、メダリストや世界チャンピオンにあこがれる。。。
ワールドセーリングの方向性は、イギリスだけを見れば間違ってはいないように思えます。ただし、この認識が共通のものとして他国でも通用するのか と言うと、そうではありません。とはいえ、「ナショナルセーリングアカデミー」で遊ぶ子どもたちや、セーラーにサインをねだるジュニアセーラーを見て、こ んなセーリング環境があったらいいな、と思えたのも確かなことでした。
バルクヘッドマガジンより
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OCEANS WATCHER
小川和幸
気象予報士、オーシャンプロデューサー
出生地 東京都目黒区
居住地 神奈川県茅ケ崎市在住
WATER KIDS JAPAN代表
OCEANS MAGAZINE編集長
特定非営利活動法人EARTH WIND & WAVE CLUB理事長
OCEANSMAGAZINE facebookページhttps://www.facebook.com/pages/Oceansmagazine/1503862653179360
大学では体育会ヨット部に入部し、副将として部員をまとめるとともに、大会では学生選手権大会で優勝し、全日本選手権大会では総合6位入賞という結果をもたらす。
その後、卒業とともにウインドサーフィンの魅力に魅せられ、それ以来、20年以上続ける。また、趣味を仕事にと、マリンスポーツ雑誌の老舗マリン企画へ入社し、ウインドサーフィン専門雑誌であるHi-Windで8年間広告営業として働く。
また、Hi-Wind時代に気象予報士の資格を取得し、世界最大の気象会社ウェザーニューズ社を経て老舗波情報である波伝説(サーフレジェンド社)へ転職して、14年間、海専門の気象予報士として働く。その間には、ラジオやTVで海の気象情報を伝えながら、日本国内におけるWCTやWQS(プロサーフィン世界大会)、プロウインドサーフィン大会、遠泳では湘南オープンウォータースイミング大会などのオフィシャル気象予報士として、マリンスポーツにおける海専門の気象予報のプロとして活躍。
現在は、独立してWATER KIDS JAPANを設立し、海の気象情報アプリ「ISLANDS WATCH」を企画・運営中。
また、特定非営利活動法人「EARTH WIND & WAVE CLUB」も立ち上げ、地元茅ヶ崎や奄美大島にて、その日のコンディションに合わせてマリンスポーツを楽しみながら、子どもから大人までに海の素晴らしさや奥深さを伝えている。