小川和幸info
ヤンマー国際モス級世界選手権大会2016記者会見
2016.05.23
きのうまではモス級の全日本選手権大会が開催され、海外からのトップ選手が集結し、イギリスやオーストラリアなどの強豪選手たちを相手に見事に日本人としてはトップで総合6位に入った梶本恆平選手が全日本タイトルを手にしました。彼は13歳のときに全日本タイトルを手にしてから28年ぶりの全日本タイトルです。
そして、いよいよあすからはヤンマー国際モス級世界選手権大会が開催されるということで、きょうはTVや雑誌、新聞などのメディアを集めた記者会見が行われました。
まずはヤンマー国際モス級世界選手権大会2016の実行委員長であり、自らも日本を代表するトップ選手である後藤裕紀氏の司会で始まりました。
また、同時に国際モスクラス協会会長であり、こちらも自らオーストラリアを代表するトップ選手で、アメリカズカップ挑戦チームとして注目されているソフトバンクチームジャパンのメンバーでもあるスコット・バベッジ氏と、ヤンマーホールディングス株式会社執行役員である荒木健氏の2名によりモスの説明や、今回の世界大会について説明がありました。
その中で、モス級というのは歴史が非常に古く、実は世界的には100年近くの歴史があり、1960年代にイギリスやオーストラリア、アメリカなどの国により国際的な協会が発足し、その後、日本も初期から参加していることが説明されました。
きのうまで行われていた全日本選手権大会も今年で50回目ということで、その歴史がうかがわれます。
また、モス級の世界選手権大会が日本で行われるのも今年で5回目で、前回は2001年に銚子で開催されていて、15年ぶりに日本でこの世界選手権大会が開催されるということで、それだけ日本はもちろん、世界でも注目され、しかも2013年からオフィシャルテクニカルパートナーとして世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」で戦うディフェンディングチャンピオン「オラクルチームUSA」を支え、日本でアメリカズカップで培った技術やノウハウをセーリング界へ還元することに力を入れ、高性能で高品質なディーゼルエンジンをはじめ、マリン業界ではその経験と技術でグローバルに活動しているヤンマー株式会社がメインスポンサーということで、世界中からトップ選手が集結し、業界でも注目されている大会です。
モス級についての説明もあり、当初から船体やセイル以外では規格などの制限が特に設けられていないこともあり、独自の進化をしてきていて、そのデザインも今では洗練されたものとなっています。そして、今後もさらにその進化は続けられていくことが予想され、その中でも特に特徴のあるフォイルについては、近年セーリング業界でも取り入れられてきていて、アメリカズカップはその代表的なものとなってきています。
そのアメリカズカップの小型版がこのモス級と言われ、アメリカズアップに参戦している選手もモスを楽しんでいる選手も少なくなく、また、そのほかオリンピック選手や、プロセイラーもモスに乗っているケースが多いようです。
今回来日している選手も例外ではなく、たとえば、きのうまでの2日間開催された全日本選手権大会で優勝したポール・グッディソン選手(UK)はロンドン五輪レーザー級の金メダリストで、アメリカズカップ挑戦チーム「アルテミスレーシング」のメンバーであり、ジョシュ・マクナイト選手(AUS)は、元世界チャンピオン(2012年)で全豪チャンピオン、クリス・ラシュリー選手(UK)は全英チャンピオン、ロバート・グリーンハウシュ選手(UK)はヨーロッパチャンピオン、ブラッド・ファンク選手(USA)は全米チャンピオンであり、このほかにも世界的に活躍しているセイラーたちが集結しています。女子でもロンドン五輪470級で日本代表となり、総合6位で、当時は世界ランキング1位となった田畑和歌子選手も参戦して女子では優勝候補と言われています。
それだけモスには計り知れない魅力があり、そのスピードと迫力に魅了されてしまっている選手も少なくないということでしょう。
そして、モスをやっている選手でも、いつかはアメリカズカップへ、という夢を抱いている選手も少なくなく、日本のヤングセイラーである矢野伸一郎選手(大学1年生)や、山崎あんな選手(スーパー女子高生の高校2年生の16歳)もユース世代として日本モスクラス協会がバックアップしています。
2020年の東京五輪では、セイリングの主流はハイスピードヨットとなることも言われていて、この頂点こそがモス級です。こうした動きの中で、日本モスクラス協会でも、次世代を担うユースセイラーに大会参加のチャンスを提供し、東京五輪のセイリング競技での日本人選手の強化・および育成をバックアップし、さらにその先にはアメリカズカップへの道も想定されているので、これからのセイリング界においては、ますますこのモス級が注目されていることは間違いないといえるでしょう。
きょうは、ヤンマー株式会社がメインスポンサーということもあり、オラクルチームUSAのCEOであるラッセル・クーツ氏も来日して、きょうの会見でモスとアメリカズアップの深いつながり、そして絆について説明がありました。
彼は、数々の国際ヨットレースで活躍するセイラーで、ヨットをやっていれば誰でも知っている世界的なヨット界のスーパースターであり、1984年のロス五輪ではフィン級の金メダリストとなり、1851年から始まっている歴史ある世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」では前人未踏の過去5回の優勝を成し遂げています。さらにスキッパーとして参戦した3大会では15勝0敗という不敗記録を打ち立てて、この記録はいまだに破られていません。
現在は、アメリカズカップ防衛チームである「オラクルチームUSA」、およびアメリカズカップ運営団体「ACイベントオーソリティーズ」のCEOを務めています。
記者会見後には、実際に海上にて練習レースが行われましたが、あいにく風が弱く、ときたま最大の特徴であるフォイリングして海上を飛ぶ姿が見えましたが、ほとんどは飛ぶことができませんでした。
あすからは、いよいよ日曜日まで世界選手権大会の本戦が始まります。
今のところ、あす以降は南寄りの風が数日にわたって6~8m/s程度で吹き続ける予報で、あいにくのきょうとは打って変わって、海上を飛ぶ姿が存分に観ることができそうです。
今回の大会は、強豪イギリスとオーストラリアとの対決が見ものとなっていますが、そうした中で、日本人選手たちがどこまで立ち向かえるかも大きな見どころと言えます。
お時間のある方はぜひ会場へ見に行ってみましょう!
大会HPは以下をご覧ください。
http://www.mothworlds.org/hayama/
文・写真:OCEANS MAGAZINE
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OCEANS WATCHER
小川和幸
気象予報士、オーシャンプロデューサー
出生地 東京都目黒区
居住地 神奈川県茅ケ崎市在住
WATER KIDS JAPAN代表
OCEANS MAGAZINE編集長
特定非営利活動法人EARTH WIND & WAVE CLUB理事長
OCEANSMAGAZINE facebookページhttps://www.facebook.com/pages/Oceansmagazine/1503862653179360
大学では体育会ヨット部に入部し、副将として部員をまとめるとともに、大会では学生選手権大会で優勝し、全日本選手権大会では総合6位入賞という結果をもたらす。
その後、卒業とともにウインドサーフィンの魅力に魅せられ、それ以来、20年以上続ける。また、趣味を仕事にと、マリンスポーツ雑誌の老舗マリン企画へ入社し、ウインドサーフィン専門雑誌であるHi-Windで8年間広告営業として働く。
また、Hi-Wind時代に気象予報士の資格を取得し、世界最大の気象会社ウェザーニューズ社を経て老舗波情報である波伝説(サーフレジェンド社)へ転職して、14年間、海専門の気象予報士として働く。その間には、ラジオやTVで海の気象情報を伝えながら、日本国内におけるWCTやWQS(プロサーフィン世界大会)、プロウインドサーフィン大会、遠泳では湘南オープンウォータースイミング大会などのオフィシャル気象予報士として、マリンスポーツにおける海専門の気象予報のプロとして活躍。
現在は、独立してWATER KIDS JAPANを設立し、海の気象情報アプリ「ISLANDS WATCH」を企画・運営中。
また、特定非営利活動法人「EARTH WIND & WAVE CLUB」も立ち上げ、地元茅ヶ崎や奄美大島にて、その日のコンディションに合わせてマリンスポーツを楽しみながら、子どもから大人までに海の素晴らしさや奥深さを伝えている。